「食の安全」「自己責任」じゃないBSE・・医療による感染

BSEの問題は「食の安全」や「自己責任」だけの問題では語れず、その国の対策を放置しておけば、医療機関や医薬品などでも「ウシからヒト」、「ヒトからヒト」へ感染する「公衆衛生」の問題につながることは、過去のブログでも指摘していることですが、

薬害や院内感染に発展するそれら問題をいまだに理解されていないマスメディアの方や、リスク論学者、食品問題を指導される立場の方々が、「リスクは大したことない」だの、さらには、自己責任で選べる環境にもないにも関わらず「自己責任の問題だ」だの、あちこちで書き散らされておられるのを見て唖然としたので、最近のそれら「BSE、vCJDと医療問題」のニュースについてまとめてみました。

■いまだに米国牛の血しょう、骨髄原料由来の医薬品が輸入されている

先日の国会の予算委員会で明らかになった話ですが、
みなさんは、2年以上前にBSEが発生、飼料管理もムチャクチャ、危険部位除去違反も多数報告されている米国から、いまだに日本に「ウシの血清」や「ウシの骨髄」を原料にした医薬品が19品目も輸入されていること、その中には子供に接種するワクチンなども含まれていること、ご存じですか?

はたともこさん(現役薬剤師)がブログにまとめてくださっています。ぜひご確認ください。

[米国産ウシ由来の原材料が使用されている医薬品](2006.2.14現在)
http://blog.goo.ne.jp/hatatomoko1966826/e/82dd93a3b1791f082ccbf72b5dcaee1c
話題のタミフルも、日本の在庫分には米国牛の骨髄から作ったゼラチンカプセルのものがあるようですね。

ついでに、「自己責任」を主張される方々には、この状態で、どうやって消費者が「自己責任」で選択できるかも教えていただきたいですね。先日輸入された、脊髄どころではない「背骨まるごと付き肉」は、フォンドボーなどの肉エキスに加工される可能性があったようですが、そうしたら表示義務はありませんから。

企業利益が優先されるBSE 2月17日(輸入業者名の多くが非公開でOK)
http://blog.goo.ne.jp/hatatomoko1966826/e/9c67668a90f7b9edda7925f241944c7d
 余談だけれど、先日珍しく貧血を起こしたので、鉄のサプリなるものを使ってみようかと思って、なるべくゼラチンとか、添加物の少ないものを使おうと選んだ某大手健康食品メーカーの「ヘム鉄」なんですが、原料について一切書いていませんでした。よく考えてみたら「ヘム鉄」って動物由来みたいなんですよね。販売会社のサイトを見たらそんな感じのことが書いてある。
 まさか、輸入品のレバー(肝臓)から抽出されたもの(もしくは米国牛レバー由来で過去に作った”在庫分”)ではなかろうかと思って、今日問い合わせてみることにしましたが、なんで消費者がそこまで調べなければ情報が入手できないのか…これも「自己責任」?

ちなみに、これも余談ですけれど、私がお話をしたことのあるプリオン学者の某先生は「そもそも私は肝臓など毒素の溜まるところは、私は、まずプリオン云々以前に食べない」といわれてました。家畜に鶏糞や鶏舎のゴミを食べさせたり、たとえば米国のレンダリングに関する、肉骨粉のレシピなどのサイトを見ても、現実にレンダリング場が公開されておらず、真実か否かを確かめるすべがないなかでは、なんとか、よりまし・・・安全なものを食べたいと思いますね。また、炎症部位にはSRM以前にプリオンが蓄積するのではないかという論文もぼちぼち出てきているので、気になっています。

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■19品目の医薬品問題が指摘された国会議事録
 第164回国会 参議院 予算委員会 
 第2号 平成18年2月1日 議事録より抜粋(家西悟議員指摘)
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0114/main.html
「平成十三年、厚生労働省からいただいた資料なんですが、牛や、牛の内臓や骨などを原料とする医薬品、医薬部外品・化粧品並びに医療器具の一覧表です。厚生労働省は最近このような表は作っていないそうですが、これを使わせていただきます。ごらんのとおり、この中には、ドリンク剤などにも使われる肝臓エキス、五黄、それからインスリン、コラーゲン、カプセルなどに使われるゼラチンといった国民の方々が日常使用しているかなりメジャーな医薬品が含まれています。これらは実は牛の内臓や骨から作られているもの、臓器を含めて作られているものがあります。
 今、世間では、米国、アメリカ産牛肉に禁止された骨が入っていたということで大問題になっているわけですけれども、大々的に取り上げられているわけです、マスコミを含めて。BSEの危険性があるのは生肉だけではありません。この場で、牛から作られた医薬品などの危険性と、業界任せの厚生労働省の生ぬるい対応について問題提起させていただきたいと思います。」

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BSEから発生する変異型ヤコブ病(vCJD)は、医療器具などによって感染拡大する恐れ

※上記、最近のものを中心にいくつかニュースをUPしてみます。字数の関係上、全ての内容をUPしませんが、リンク切れでアクセスできない場合はgoogleでタイトルを検索すると出てくると思います。

ヤコブ病患者の手術器具、46例で適切処理せず再使用
http://www.asahi.com/health/news/TKY200602080489.html
2006年02月08日21時02分(朝日新聞

★輸血で英3例目のヤコブ病 8年後に発症
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060210-00000021-kyodo-int
 【ロンドン9日共同】英保健当局は9日、牛海綿状脳症(BSE)が感染して起こるとされる変異型のクロイツフェルト・ヤコブ病の感染者から輸血を受けた患者が、同病に感染している可能性が高いと診断されたと発表した。輸血を通じた感染は英国で3例目という。 この患者は輸血から8年後に発症し、専門病院で治療を受けているという。血液を提供した感染者は献血の1年8カ月後に発症した。 ヤコブ病は、進行性の認知症や運動失調の症状が出て、全身衰弱などで死に至る。(略)

★輸血によるvCJD感染をめぐり6,000人に警告ー英国保健省
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/04092201.htm

ヤコブ病 22患者二次感染も
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20060220ik05.htm
手術器具の滅菌不十分(2006年2月20日 読売新聞)
 国内の医療機関脳神経外科手術を受けた患者2人が、手術後4か月以内にクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)と診断され、同じ器具を使って手術を受けた22人に二次感染の可能性があることがわかった。(略)
厚労省研究班が2003年に作成したCJDの感染予防指針には、脳神経外科手術に使う器具は使用後に特殊な消毒液で滅菌処理をすることが盛り込まれている。しかし、この医療機関は、患者2人の手術で使った器具を、通常の滅菌処理のみで別の患者の手術に使用していた。 22人の患者は、CJDに二次感染した可能性について病院から告知を受け、献血を控えることなどを指示されている。 04年にも同様の報告が1例あり、11人が追跡調査の対象となっている。 同省はこうした事例が相次いだことを受け、来年度にCJDの二次感染対策の検討会を設置し、診療指針の見直しなどを行う方針。

ヤコブ病解剖費に公的補助 BSE感染の変異型対策
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060128-00000030-kyodo-soci
(略)ヤコブ病には変異型や原因不明の孤発性があり、変異型と確定するには、脳に沈着して病因となる異常プリオンタンパク質のタイプや集まり方を死後に解剖して調べる必要がある。 しかし、厚労省CJDサーベイランス委員会の調査では、孤発性として死亡した患者の脳の解剖率は18%で、欧州主要国の70%以上よりかなり低い。いったんは脳波などから孤発性と診断された男性が、脳の解剖で昨年2月に国内初の変異型と分かった例もある。 確定診断は感染の拡大防止にも重要だが、解剖が進まない要因として経費や設備面、感染への不安が挙げられている。 (共同通信) - 1月28日6時34分更新

vCJD問題ともかかわる歯医者や内視鏡による院内感染に関わる情報
歯科はヤコブ病対策以前に、院内感染対策自体に問題があることは過去にも触れましたが、
http://blog.goo.ne.jp/infectionkei2/e/7258e2b1bb9c44d331a0a62b2616a83f

内視鏡による院内感染事件報道を時折耳にします。ピロリ菌やO-157、耐性緑膿菌などの大学病院などでの感染ニュースを記憶されている方も少なくないと思います。その院内感染対策は、ヤコブ病対策以前に、まだまだ問題があるようです。参考までに今年の学会発表のタイトルを。
http://www.ask.ne.jp/~jgets/prog56.html
平成18年5月14日(日) 第56回日本消化器内視鏡技師研究会
23 内視鏡洗浄・消毒ガイドラインの遵守率はなぜ低いのか?
   −内視鏡感染管理の問題点とその対策−

プリオン対策を考える担当の方々は、現場のこの現実を知ってるんですかね?縦割りで「担当が違う」から知らないのかも?

■ヒト由来の血液製剤vCJD対策

現実的な血液製剤への対策では、以下の方法があるようですが、完璧なものはまだ販売されていないようです。
BSE対策がずさんで、各地でCJDの集団発生問題が心配されている米国からも大量に血液製剤が輸入されています。

1 エタノール分画
2 PEG分画
3 グリシン分画
4 イオンクロマト処理
5 ナノフィルトレーション
6 アフィニティークロマト

川崎厚生労働大臣が先日国会で「血液製剤は(vCJD問題において)安全が確保されている」みたいなテキトーな発言したのにはぎょっとしましたが、そんな感覚だから米国のBSEやvCJD対策を放置して見てられるんだということですね。

英国では、潜伏期間中のvCJD患者さんの献血血液製剤に加工され、その製剤を使用した数千人に警告がでました。内容は、病院や歯科、検査などを受診するときに前もって病院にその旨を通知することです。つまり、その数千人の方々の感染の心配が出てきて、医療器具などから他のヒトに院内感染する可能性があるため、使用後の器具について、専用のプリオン対策の滅菌消毒※が必要だからです。輸出入のグローバル化が進み海外との交流が盛んな日本でも対岸の火事ではありません。

※表1.プリオン対策の消毒法は下記サイト
クロイツフェルト・ヤコブ病感染予防ガイドライン(2003年3月版) 表1参照
http://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r7/

■過去の厚生労働省の対策から今のBSE→変異型ヤコブ病問題を考える
<日本で濫用されている血液製剤:薬害事件から>

C型肝炎の患者は日本に200〜300万人いると推定されています。血液製剤や輸血などによる薬害によるものが少なくないようです。プリオンは今現在、スクリーニングおよび有効な失活方法がないため、同様の問題に発展する可能性があります。参考までに過去記事を。

◆「アルブミン」は、かつて世界の消費量の3分の1を日本が使っていた。
朝日新聞2005年7月17日社説から
血漿(けっしょう)に含まれるたんぱく質アルブミン」は、かつて世界の消費量の3分の1を日本が使っていた。本来はやけど治療などに使われるのに、栄養剤としても使われてきたからだ。 使うほど病院などの収入が増えることから、必要以上に消費する傾向も指摘されている。」

◆薬害肝炎の厚労省最終報告書、旧厚生省の責任触れず
 血液製剤フィブリノゲン」をめぐる薬害肝炎問題で、米国が1977年に同製剤の製造を禁止した後、日本では約10年間も対策が取られなかったことについて、旧厚生省の対応を検証してきた厚生労働省の最終調査報告書案の全容が27日、明らかになった。海外での医薬品の安全情報を収集する体制が不十分だったとする一方で、「当時は肝炎発症例が極めて少なかった」などとして、旧厚生省が対策を講じなかった責任については問題ないとの見解に終始し、被害者らから批判の声が上がりそうだ。
 調査報告書案によると、米国が製造禁止としたことを、旧ミドリ十字(現三菱ウェルファーマ)は78年に把握。旧厚生省の試験研究機関の幹部職員も79年には把握していた。しかし、旧厚生省が把握したのは84年になってからで、把握後も、87年4月に青森県で非加熱製剤によるC型肝炎ウイルスHCV)の集団感染が発覚するまで対策が講じられなかった。
 これについて報告書案では、〈1〉当時は製薬企業や試験研究機関から、海外での医薬品の安全情報を報告させる制度がなかった〈2〉旧厚生省にも自ら情報を収集する仕組みがなかった――として、「情報収集体制が不十分だった」とした。
 しかし、米国の措置を把握した後の対応については、〈1〉肝炎発症例は極めて少なかった〈2〉肝炎感染のリスクより(止血剤としての)有用性の方が高く評価されていた――などの理由から「対策を講ずべきとの判断に立つ状況にはなかった」と結論。同省が当時、同製剤の危険性を判断するための議論さえしていなかったことには言及していない。(2002年8月28日読売新聞)

責任を取らない厚生労働省のページから 
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/12/h1209-1/index.html
平成16年12月9日
C型肝炎ウイルス検査受診の呼びかけ
フィブリノゲン製剤納入先医療機関名の公表について)
フィブリノゲン製剤の投与を受けた可能性のあると思われる方は、
一度血液検査を受けて下さい。

 フィブリノゲン製剤は、人の血液の成分を原料とした医薬品の一種で、かつては大量出血時の止血等の目的で、特に昭和63年6月以前は多くの医療機関で用いられていました(昭和63年7月以降、フィブリノゲン製剤は、基本的に「やむを得ない場合に必要最小限量を使用すること」とされたため、販売数量は激減したと報告されています。)。しかし、その当時、フィブリノゲン製剤の原料に混入した肝炎ウイルスを不活性化するための技術が十分でなかったことから、平成6年*以前に同製剤を投与された方々は、肝炎ウイルスに感染している可能性が一般の方より高いと考えられます。そのため、厚生労働省では、フィブリノゲン製剤の納入先とされている医療機関を公表し、これら医療機関の協力を得て、同製剤を投与された可能性のある方々に対し肝炎ウイルス検査の呼びかけを行うこととしました。
 次に該当する方々については、C型肝炎ウイルス検査を受診されることをおすすめします。C型肝炎ウイルス検査は、多くの保健所、市町村等で検査を安く受けられるよう、体制の整備に努めているほか、医療機関などで受けることができます。(略)対象者など詳細は以下参照
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/12/h1209-1/index.html

血液製剤や輸血は保険点数が高いため、病院にて、本当に必要かと思われる治療にまで使用されてきた現実があるようです。今現在、その体制は変わっているのでしょうか?病院にかかるときは、それを使うことが本当に必要なのか、確認したほうがいいかも知れませんね。

薬害エイズ事件から>
第5回血液行政の在り方に関する懇談会 議事録から抜粋
1.日 時平成9年4月23日(水)14時00分〜16時00分
2.場 所厚生省共用第6会議室
(1)東京HIV訴訟原告団弁護団及び東京HIV訴訟原告団弁護団からの意見陳述
「(抜粋)私が18歳の春、激しい嘔吐で倒れ入院したとき、医師はB型肝炎の感染を告知しました。そして、血液製剤を使っている限り、これは仕方ないんだよ、と説明しました。さらにC型肝炎の感染を知り、本当に仕方がないのか、という疑問はぬぐいきれませんでした。そして、今度は最後にHIV感染。否、これがほんとに最後といえるのかどうか。現在の血液行政を変革しない限り、血友病の患者をはじめ、国民が未知の病原体の危険にさらされている現実には変わりありません。
いまこそ私たちは血液事業法の制定を望みます。うまみのある商品として大量に輸入、濫用される血漿分画製剤、薬価差益が生み出す営業優先の供給体制、輸入血漿に対するずさんな監視体制、エンドユーザーである患者に対して何人も責任を負うことがない無責任体質、これらを改革するために、この血液事業法においては、原料血漿の国内自給の確立、アルブミン免疫グロブリン等の血漿分画製剤の適正使用、ユーザーである患者も参加した形の責任ある監視体制の確立、リコンビナントも含めたすべての血液製剤の供給一元化等を明文化する必要があると考えています。)」

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その他の「公衆衛生とBSE,vCJD」まとめ記事
http://blog.goo.ne.jp/infectionkei2/c/a0209d89782edb34131184136abc37e0