羊の炎症乳腺に異常プリオン 牛の炎症部位は大丈夫?

■羊の炎症乳腺に異常プリオン ”牛の炎症部位”は大丈夫?

私がいつも勉強させていただいている農業情報研究所さんのサイトに、日本で全然報道されないネイチャー論文(11月4日)の新情報があります。

スクレイピーの羊の炎症をもつ乳腺に異常プリオン
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/05110401.htm
研究者は100万頭以上の羊がいるサルジニア島に渡り、遺伝的にスクレイピーに罹りやすい261頭の羊を分析した。そのうち7頭はスクレイピーに罹っており、4頭は乳腺に炎症をもっていた。これら4頭のすべての乳腺に異常プリオン蛋白質が発見され、他の羊では発見されなかった。ネイチャー・ニュースは、これは感染動物の乳に異常プリオン蛋白質が存在する可能性を示唆すると言う。
 もしも乳中に異常プリオン蛋白質が存在するとすれば、異常プリオン蛋白質に汚染された牛肉だけでなく、汚染牛乳の消費により人間がBSEの人間版である変異型クロイツフェルト・ヤコブ病vCJD)になるのではないかという懸念が生じる。Cashman氏は、「これは深刻な問題を提起する」と言う。
 同じ研究グループは、今年初め、炎症を起こしたマウスの膵臓、肝臓、腎臓に異常プリオン蛋白質を発見している(炎症で特定危険部位以外臓器に異常プリオンが蓄積ーBSE対策見直しを迫る新研究)。さらに、先月、腎臓に炎症のあるマウスの尿にも異常プリオン蛋白質が含まれる研究を発表している(ウクライナでBSE確認の情報)。これらのことが、今回の研究を促したという。
(抜粋、全文をどうぞ)

■成長ホルモンrBSTを使用すると乳腺炎にかかる率が25%増加?

ここで私が気になるのは、米国の牛は、EUや日本など各地で禁止している成長ホルモンrBSTなどを牛に使用している場合があるという現実です。ホットワイヤードの記事によると、それを行うと、乳腺炎罹患率が25%もUPするとのことです。

牛乳の「人工ホルモン不使用」表示は不当か(上) 
2003年9月16日 Hotwired Japanの記事から抜粋
http://hotwired.goo.ne.jp/news/culture/story/20030918205.html
 米農務省(USDA)は、米国の酪農家の約17%がrBSTを使用し、投与されている乳牛は全体の32%にあたると発表した(PDFファイル)。その大半が、乳牛を数千頭単位で飼っている大規模農家だという。 ポジラックは、牛が乳を分泌するときに出す成長ホルモンから分離した遺伝子で作られている。この遺伝子を大腸菌に注入し、容器内で急速に培養する。これを牛に注射すると、牛が毎日出す乳の量が増えるだけでなく、乳を出す期間も長くなる。農家によると、乳を出す期間が延びるのは平均30日ほどだが、もっと長くなる場合もあるという。1155日間も乳を出しつづけた例もある。ポジラックを投与された牛の大半は、投与されなかった牛よりも約25%乳量が増えている。(略)
 小規模農場がrBSTを使わないのは、時間とコストがかかるという理由のほかに、ホルモンが牛に及ぼす副作用を嫌っているからだ。カナダ保健省が1999年に出した報告書は、rBSTを投与した牛は乳腺炎にかかる率が最大25%増加し、それによって牛の体細胞、すなわち膿が牛乳に混じる確率も高くなることを示している。
注:体細胞と膿は異なるという指摘がありました。詳細はコメント欄ご参照。
 この調査はまた、rBSTにより牛の不妊症が18%、四肢の運動障害が最大50%増加すると報告している。このデータに基づき、カナダ当局はrBSTを認可しなかった。
 欧州連合(EU)15ヵ国、オーストラリア、ニュージーランドノルウェーも同じ理由でrBSTを認めていない。認可しているのはブラジル、南アフリカパキスタン、米国など19ヵ国だ。
(抜粋 全文をどうぞ)

成長ホルモンを与えることで急激に成長が促進されますので、それに見合う蛋白質と脂肪を牛に与えなければなりません。肉骨粉が3割も入っていると見積もられる鶏糞を牛に与えるのもそういった理由なのでしょうか?


■乳房炎追記:牛の飼育環境が影響

情報をいただきました。。

>乳房炎のことですが、ピーター・ローベンハイムの「私の牛がハンバーガーになるまで」(日本教文社)には次のように書かれています。ホルモンだけの問題ではなさそうです。

「酪農牛が置かれている今日の生活環境を考え合わせれば、乳房炎は当然なるべくしてなっている病気と言っていいだろう。酪農家養成講座に参加した時、獣医師はこう説明した。”自然界で暮らす牛はめったに乳房炎にはかかりません。牛は本来食餌の場所と排便の場所が異なるため、乾いた地面の草を食べているからです。乳房炎にかかりやすい状況を作っているのは人為的な生活環境、牛舎へのつめ込みや排便の仕方なのです”。・・・”抗生物質を繰り返し投与しても効き目が現れない慢性乳房炎であれば、牛を早急に処分することが肝心です”と言っていた」。

これは日本の話ですが、畜産のひずみが垣間見れるレポートがありますので、ご覧ください。いろいろ考えさせられます。。
2001年11月26日 北海道でフリーの記者をなさっておられる滝川康治様のレポート
http://www.geocities.jp/forelle2003/index_html/opinion.html
「高泌乳こそレベルの高い酪農」・・・米国は、今もこれを続けているということでしょうか。

成長ホルモンの問題については笹山登生さんがブログにまとめてくださっておりますのでご紹介させていただきます。

■「日本の消費者のアメリカ牛肉ボイコット運動は、ホルモン入り牛肉のボイコットにまで拡大するであろう。」との論評

必見
■「日本の消費者のアメリカ牛肉ボイコット運動は、ホルモン入り牛肉のボイコットにまで拡大するであろう。」との論評
http://www.sasayama.or.jp/wordpress/?p=495
11月13日追記:笹山登生さんからさらなる情報を頂戴しました。コメント欄に追記をさせていただきますのでコメント欄をごらんください。また別の日にこの問題を取り上げようと思います。

昨年4月にはこんなニュースも。
Growth hormones in veal spark debate
http://www.usatoday.com/money/industries/food/2004-04-01-veal_x.htm
up to 90% of U.S. veal calves are being fed synthetic testosterone illegally
米国の食肉用子牛の90%が違法に合成テストステロンを与えられている
veal industry officials said that calves have been fed growth hormones for decades
肉牛の業者によると、子牛への成長ホルモン投与は何十年もやっている

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炎症部位とプリオンについて専門家の話(新聞記事から)

異常プリオン、腎臓や肝臓にも蓄積 マウス実験で判明
asahi.com)2005年1月21日
どの炎症マウスでも、通常の感染で脳に現れるより数十日程度早い60〜100日で、炎症のある臓器で異常プリオンの増殖が確認された。慢性炎症のないマウスでは見られなかった。(朝日記事より抜粋)
国立精神・神経センター神経研究所の金子清俊・疾病研究第7部長の話 
「動物の臓器の慢性炎症は目で確認できないだけに気になる」

慢性炎症を持つマウスの臓器に、異常プリオン蓄積−−欧米研究チームが実験
毎日新聞 2005年1月21日 東京朝刊
プリオン病に詳しい国立精神・神経センター神経研究所の金子清俊・疾病研究第7部長の話 
「牛などの家畜で慢性炎症があると、脳で検査できる前に、病原体が広がってしまう可能性があることを示唆している。」
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ちなみに、炎症部位からプリオンの話は食品安全委員会の答申に一切考慮されてません。こんな↓報道があってもです。予防の原則ってどこにいってしまったんでしょう?

■膿瘍を食肉に付着させたまま出荷?!(ガイアの夜明け
8月16日放送 第174回
日経スペシャル「ガイアの夜明けアメリカ牛肉は大丈夫か
http://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/backnumber/preview050816.html
閲覧者のまとめが↓にUPされてますけれど、私も見ましたけど
牛の緑色のぶつぶつの膿瘍(病変)を、肉に付着させたままそのまま出荷してるとか、やってましたね。再放送希望。

膿瘍とは? のう‐よう〔‐ヤウ〕【×膿×瘍】
化膿性の炎症において、組織が局部的に融解し、膿(うみ)がたまった状態。皮膚・肺・腎臓・肝臓・脳によく発生する。
大辞泉

http://nyoze.seesaa.net/article/8294815.html
 報道を見た方のまとめ↑
【緑色の変な豆状の塊がいくつもくっついている】

ガイアの夜明けが、「アメリカ牛肉は大丈夫か」というタイトルで、
アメリカの食肉加工工場の実態について報じていた。昨年、来日して、
日本政府や消費者に【米国牛肉加工現場のひどい実態と危険性】を訴えた
大手食肉加工企業タ(略)社の労組委員長(元)も出演していた。
ちなみにこの番組の取材時には彼は、同社を辞めていたようだったが、
その理由については番組では触れていなかった。
彼は以前、【加工工場の内部の非衛生的な実態】を告発するためのビデオを撮影し、
米メディアにも公開していたのだが、番組ではそれも流されていた。

そのなかで、解体した牛の肉に【緑色の変な豆状の塊がいくつもくっついている】のが映っていたのだが、
日本の獣医学の専門家に見てもらった結果、それは、牛の身体に細菌が入り込んでできた膿瘍だということが分かった。
日本では、こういうのが見つかった牛は、当然食肉にはせず(この部分は?)廃棄するのだそうだが、
タ(略)社では【そのまま食肉として出荷している】のだという。

さらに今も同社に勤める社員によれば、月例判別や危険部位除去などBSE対策については、
【講習すら行われていない】のだという。仕方ないので、現場の作業員同士で自主的に勉強しているのだそうだ。

なお、余談?ですが、10月31日のプリオン専門調査会で配布された答申案に、牛の「口蓋扁桃」から感染性のあるプリオンが検出されたという情報が載っていました。これは新しいSRMということでいいのでしょうか?舌扁桃SRMにあがっていましたけれども。