OIEの問題点 公衆衛生・院内感染の学者の不在

■世界のBSE,vCJD対策を決めるOIEの問題点・・・公衆衛生・院内感染対策の学者の不在

前書きの乱文

一部の、不勉強なリスク論学者が、
もはや国境のない、生産・加工・流通・消費とその後・表示の現場と、人の移動などのtotalな諸問題・現実を無視して、
BSE問題を「たいした問題ではない」などとしているのが災いしていることもあり、
実のところ、行政の対策もまだまだ遅れているし、日本でも殆ど報道されないんだけれども、

狂牛病は、もはや「公衆衛生」や「院内感染」問題に、密接にかかわっている。

(私は輸血関係の行政担当者の方の発言を聞いて、そのリスク論学者の見解の、行政への影響をはっきりと目の当たりにした。)

イギリスやフランスでは、たった一人の狂牛病由来の変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の方の潜伏期間中のご好意の献血が、
数年前に血液製剤に入ってしまったことが判明したことで、数千人に影響が出て、対策が必要になってしまったことは何度も触れてきた。

しかも、医療器具のプリオン病専用の厳密な滅菌消毒や廃棄などの、独特の対策以前に、
日本の院内感染対策の不備の問題、
いわゆる、歯科の滅菌消毒の不備や、内視鏡による院内感染問題や消毒の難しさ、
ヒト由来の輸血や血液製剤、その他の製剤の濫用という問題がある点についても、触れてきた。

つまり、その「不備」によって、薬害エイズ事件や、薬害ヤコブ病事件のように、プリオン病がヒトからヒトへの感染拡大に直結する可能性がある、という大問題があるにも関わらず、

そのことを満足に報道してくれているメディアは実に少ないし、リスク論学者の中には「ソレとコレとはカンケイない」なんて無責任なことを言っている人もいる。

現実的に、(感染しやすいとされる乳幼児に使用するワクチンも含めて)、アメリカ牛由来の一部の医薬品が最近も放置、輸入されていたりなどの問題があったり、自身の発言が行政に影響しているにも関わらずである。

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話は変わるけれども、

私はかつて、海外に本社のある企業の院内感染対策部門にいて、
院内感染対策について研修を受け、実験説明、製品紹介の傍ら、
当時の海外の最新の感染症情報や文献などを医療従事者にお知らせしたりなどの仕事に就いていた経験がある。

そのため、米国の病院の見学も含め、数多くの病院の、手術室や中央滅菌材料室、院内感染対策について、
普通にひとっところの病院に長く勤めておられるお医者さんや看護婦さんよりも、
院内感染対策の観点から、多くの病院を見、出入りの業者さんの「裏話」も聞き、
対策の現実の情報を入手する機会に恵まれたと思う。

そのときの経験を少し書こうと思う。

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その頃はまだ、日本にエイズ患者が蔓延するわけがない、と思われていた時代だった。

医療従事者ももちろん油断していた。

例えば肝炎、結核、梅毒などの、一部特定の感染症の検査のみで、
HIVの検査」を「プライバシーの問題」云々で、していないのにも関わらず、
(医療従事者の保護の観点は無視されてたということでしょうか)

「一部特定の病原体が検出されなかった」=「この患者さんは感染症を持っていない」という扱いをしていたわけである。

(E型肝炎や寄生虫etc..の問題もあるのに、SPF無菌豚だから大丈夫、生で食べられるなんていってお客に出している料理屋があるのと一緒ですね。)

WHOが、世界に新興感染症が30種以上出現した、なんて声明を出したり、
「全ての血液、体液は汚染されているものとして考え、対策するべき」という
ユニバーサルプレコーション(標準予防策)などが海外で注目されていた頃だけれども、

日本にはまだまだそれら概念が浸透していなかった時代。

でも、日本にHIVが侵入、風俗ヤバス、などという話が、ポツポツ一部の週刊誌だけに出たころに、学生生活を送っていた私は、

そのころ、性に対しては、所謂、既存の日本の倫理観を持たぬ、多分に大らかな感覚の生活を送っていた某女子学生が、
検査をしてから学校にこなくなってしまったという話や、
彼女と関係する、ある学校の”複数の運動部”の学生が”こぞって”検査にいった話などの話を運動部メンバーから耳にしていた。

また、北方謙三池波正太郎の影響もあるんだろうけれど、私は、卒業してからは洋酒やカクテル、日本酒などのお酒に凝りまして。。本当にまぁ、あちこちの店でよく飲んだんですね。。

そこで出会った、人生の酸いも甘いも噛み分けた、人生の裏も表も知っているような、魅力的な諸先輩方々や、医療関係の営業活動で知り合う方々から、
「世の中の、世界の現実」をいろいろ教えてもらって、私はかなり耳ダンボ(^^;になった方だと思う。

つまり、例えばHIVの件では、世間や医療現場が、情報がなく病気をなめまくっていた時代に、
その裏の現実の話を聞く機会に恵まれたということなのかも知れない。

現実はそれほど甘くない、裏があることを知った私が、
訪問する数々の病院のスタッフは、多くの方が油断されていた。

いちばん象徴的なのは、病気の感染源となる血液、体液がボタボタ落ちる中、
そして鋭利な手術器具が落ちる危険がある中でも、
日本の殆どの医療従事者が「裸足に、足の指の見えるつっかけサンダルで手術」を行っていた(いる)ってことじゃないかと思う。

(サンダルは共用が殆どで、一回一回洗浄していない病院ももちろんあった。私自身も血液の付着したサンダルを何度も目撃した)

実際に話を聞けば、当然、多くの従事者が「危険」と感じていたんだけれど、当時の「医療界の体質」の中では、(もしかしたら日本人の性質?)それを言い出せない雰囲気があった。

また、ハードな現場の、日々の、目の回るような忙しさで、それどころじゃなかったのかも知れない。
余談だけど、私の知っている婦長さんも、すごいいい女なのにも関わらず、独身が少なくなかったように思う。あれだけ忙しければ当然時間なんて取れないもの。

また、対策が取れなかったのは、「慣れ」の問題もあると思う。
他分野から来た人間のほうが「当たり前」が「当たり前でない」ことに気がつきやすいこともある。

コストの問題もある。資材課(用度課)との情報の差もある。
(余談だけれど、日本でも、もっと「寄付制度」が充実してくれるといいなと思う。
例えばトイレの手洗い水道の栓を手に触れないものに変更するための寄付を募集、とか。)

それから、「ある特定の専門分野のエキスパート」であることと、「院内感染のエキスパート」であることは違うし、

ある有名なお医者さんでも、輸血はともかくも、血液製剤や、特定生物由来製品を「感染源」として意識していなかったり、

必要のない部分での濫用はともかくも、「大手術」の前では、そういった問題は微々たること、というか意識されないことになってしまうのも現実だと思う。

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以前、「日本では裸足につっかけサンダルで手術の風習がある」話を、米国のある大病院の、院内感染対策部門の婦長さんにお話ししたことがある。

そしたら、彼女は天を仰いで、「Oh,My GOD!」と叫んだ。そのことがとても印象的に残っている。

(米国では訴訟の問題も大きいのだろうけれども、その病院では、医療従事者が
「キャップ、アイガード(目の粘膜を保護するもの)、マスク、ガウン、二重手袋、シューカバー(サンダルなど足の保護が出来ない履物は当然論外)」を
着用しないで手術に臨んだらクビとのことだった。

私はいま、狂牛病→変異型ヤコブ病の問題でも、当時と同じような匂いを感じている。

もはや、BSE問題は、「自己選択」「自己責任」の問題ではなく、「公衆衛生」「院内感染」に直結する問題なのである。

病気にならない人はまれだろうし、事故に遭う場合だってある。決して他人事ではない。
また、自分や家族やら、大切な人の身を守りたくても、こればっかりは自分でどうこうできる問題ではない。
例えば出産で、縫合の経験がある方は過去、現在も少なくないみたいだけれど、
過去、その糸は「牛の腸」由来だった可能性も、などということを指摘しているサイトもあるけれど、
そんな問題提起、知っている人のほうが少ないと思う。私も最近まで知らなかった。

豚の脳内接種による感受性のほか、昨年、不顕性感染に関する論文の話題が出た後に、
実は、投与されたヘパリンが牛やら豚の腸粘膜由来だったんだけど、担当の医師からはそんな話は一切聞いてなくて、
豚の産地はどこか、とか、牛の危険部位入り肉骨粉を食べまくってる豚が今も使われてないか、とか、
そんなことを思うのは、本当に「杞憂」なんだろうか?

患者だけでなく、医療従事者も、まず「自分の身を守らない」で、「他人の身を守れる」ものなんだろうか?

というところで、前置き駄文はこのあたりで終わり。

本題のOIEに関する更新は本日または明日中にする予定です。
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ところでですが、
日本脳神経科学会に所属するある病院が、BSE問題とヤコブ病について声明を出したそうだけれども、それが報道される様子がないんですね。
どなたか詳細をご存じな方がいらしたらお教えください。